電場や磁場中を運動する電荷を持った物体の運動方程式によく出てくる連立微分方程式の解き方をまとめておく。
例えば$z$正方向に一様な磁場$\bm B$がかかっている時、質量$m$、電荷$q$の物体を原点からy軸正方向へ初速度$v$で打ち出した時の運動方程式は$m\bm v' = q(\bm v \times \bm B)$となる。外積は次の行列式で求まる。
$$
\left|
\begin{array}{ccc}
\bm i & \bm j & \bm k \\
v_x & v_y & v_z \\
0 & 0 & B
\end{array}
\right|
$$
結果
\begin{align}
m{v_x}' &= q v_y B \tag{1} \\
m{v_y}' &= - q v_x B \tag{2} \\
m{v_z}' &= 0
\end{align}
$(1)$を変形すると
$$ {v_y} = \frac{m}{qB} {v_x}' $$
となる。これを両辺$t$で微分すれば
$$ {v_y}' = \frac{m}{qB} {v_x}'' $$
これを$(2)$へ代入すると
\begin{align} {v_x}'' &= - \frac{q^2B^2}{m^2} {v_x} \\
&= - \omega^2 {v_x}\end{align}
となる。このように$\omega$をおけば単振動同じ式になるので${v_x}$は
$${v_x} = c_1 \cos \omega t + c_2 \sin \omega t$$
となる。次に$v_y$を求めるがこの時$v_x$と全く同じ手順で求めるとうまくいかない。計算自体はできるが積分定数の設定が正しく行えないのである。連立微分方程式なのだから$v_x$と$v_y$は互いに関係しあうので独立して求めてはいけないということ。なので$v_y$は求まった$v_x$を実際に当てはめて計算する。
まず$(1)$を整理すると
\begin{align} {v_y} &= \frac{m}{qB} {v_x}' \\
&= \frac{1}{\omega} {v_x}'
\end{align}
となる。$\omega$は先ほど置いたとおり。ここへ求まった${v_x}$を微分して代入すれば
\begin{align}
v_y &= \frac{1}{\omega} \left( -\omega c_1 \sin \omega t + \omega c_2 \cos \omega t \right) \\
&= - c_1 \sin \omega t + c_2 \cos \omega t
\end{align}
これで$v_x$と$v_y$が積分定数を通して結び付けれれた式が完成した。後は初期条件から積分定数を決定するだけ。$v_x$と$v_y$どちらの式から初期条件を与えても良いが結果から言うと$v_y$から求めたほうが手間が少ない。(やってみればわかる。)
まず$v_y$は$t=0$で$v$なので
$$v = c_2$$
続いて微分すると$y$方向の加速度が求まり、$t=0$で$y$方向への力はかかっていないので加速度0となり
$$ m \times 0 = - m \omega c_1 $$
なので$c_1=0$となる。
更に今度は積分する。初期位置が$y=0$ならば
\begin{align} 0 &= \frac{v}{\omega} \sin \omega t + c \\
&= c
\end{align}
よって最終的に
$$ v_y = v \cos \omega t$$ $$ y = \frac{v}{\omega} \sin \omega t $$
となる。また以上で求まった積分定数を$v_x$にも代入すると
$$v_x = v \sin \omega t$$
と一気に決定する。後は積分して$x$の積分定数だけ決定すれば良い。
$$ x = -\frac{v}{\omega} \cos \omega t + c $$ $$v = \frac{v}{\omega}$$
よって
$$ v_x = v \sin \omega t $$ $$ x = \frac{v}{\omega} (1 - \cos \omega t) $$
となる。
ここに更に電場もかかると例えば次のような運動方程式が成り立つ。
\begin{align}
m{v_x}' &= q v_y B \\
m{v_y}' &= qE - q v_x B \\
m{v_z}' &= 0
\end{align}
めんどくさいがこれも同様に解けば求まる。