2014年8月24日日曜日

電磁気の問題に出てくる連立微分方程式

電場や磁場中を運動する電荷を持った物体の運動方程式によく出てくる連立微分方程式の解き方をまとめておく。

例えば$z$正方向に一様な磁場$\bm B$がかかっている時、質量$m$、電荷$q$の物体を原点からy軸正方向へ初速度$v$で打ち出した時の運動方程式は$m\bm v' = q(\bm v \times \bm B)$となる。外積は次の行列式で求まる。

$$
\left|
\begin{array}{ccc}
\bm i & \bm j & \bm k \\
v_x & v_y & v_z \\
0 & 0 & B
\end{array}
\right|
$$

結果

\begin{align}
m{v_x}' &= q v_y B \tag{1} \\
m{v_y}' &= - q v_x B \tag{2} \\
m{v_z}' &= 0
\end{align}

$(1)$を変形すると

$$ {v_y} = \frac{m}{qB} {v_x}' $$

となる。これを両辺$t$で微分すれば

$$ {v_y}' = \frac{m}{qB} {v_x}'' $$

これを$(2)$へ代入すると

\begin{align} {v_x}'' &= - \frac{q^2B^2}{m^2} {v_x} \\
&= - \omega^2 {v_x}\end{align}

となる。このように$\omega$をおけば単振動同じ式になるので${v_x}$は

$${v_x} = c_1 \cos \omega t + c_2 \sin \omega t$$

となる。次に$v_y$を求めるがこの時$v_x$と全く同じ手順で求めるとうまくいかない。計算自体はできるが積分定数の設定が正しく行えないのである。連立微分方程式なのだから$v_x$と$v_y$は互いに関係しあうので独立して求めてはいけないということ。なので$v_y$は求まった$v_x$を実際に当てはめて計算する。

まず$(1)$を整理すると

\begin{align} {v_y} &= \frac{m}{qB} {v_x}' \\
&= \frac{1}{\omega} {v_x}'
\end{align}

となる。$\omega$は先ほど置いたとおり。ここへ求まった${v_x}$を微分して代入すれば

\begin{align}
v_y &= \frac{1}{\omega} \left( -\omega c_1 \sin \omega t + \omega c_2 \cos \omega t \right) \\
&= - c_1 \sin \omega t + c_2 \cos \omega t
\end{align}

これで$v_x$と$v_y$が積分定数を通して結び付けれれた式が完成した。後は初期条件から積分定数を決定するだけ。$v_x$と$v_y$どちらの式から初期条件を与えても良いが結果から言うと$v_y$から求めたほうが手間が少ない。(やってみればわかる。)

まず$v_y$は$t=0$で$v$なので

$$v = c_2$$

続いて微分すると$y$方向の加速度が求まり、$t=0$で$y$方向への力はかかっていないので加速度0となり

$$ m \times 0 = - m \omega c_1 $$

なので$c_1=0$となる。

更に今度は積分する。初期位置が$y=0$ならば

\begin{align} 0 &= \frac{v}{\omega} \sin \omega t + c \\
&= c
\end{align}

よって最終的に

$$ v_y = v \cos \omega t$$ $$ y = \frac{v}{\omega} \sin \omega t $$

となる。また以上で求まった積分定数を$v_x$にも代入すると

$$v_x = v \sin \omega t$$

と一気に決定する。後は積分して$x$の積分定数だけ決定すれば良い。

$$ x = -\frac{v}{\omega} \cos \omega t + c $$ $$v = \frac{v}{\omega}$$

よって

$$ v_x = v \sin \omega t $$ $$ x = \frac{v}{\omega} (1 - \cos \omega t) $$

となる。

ここに更に電場もかかると例えば次のような運動方程式が成り立つ。

\begin{align}
m{v_x}' &= q v_y B \\
m{v_y}' &= qE - q v_x B \\
m{v_z}' &= 0
\end{align}

めんどくさいがこれも同様に解けば求まる。

2014年8月23日土曜日

理想気体の自由度

理想気体の自由度について簡潔にまとめる。

単原子分子

単原子分子の場合、自由度としては並進運動として$x,y,z$方向の3つの自由度が考えられる。回転については考えないので結論として単原子分子の自由度は3

単原子分子の自由度は3

直線状多原子分子

まず直線状の2分子原子を考える。このとき自由度は並進運動が$x,y,z$の自由度3。回転運動として3軸考えられるが1軸は対称性から考えないので自由度2。よって足して自由度は5となる。

次に直線状は変わらず原子の数だけ増やした場合を考える。直線状であるならば原子が増えたところで自由度は変わらないことがわかる。並進運動の自由度は無論変わらないが回転運動についても1軸は常に対称なので変わらず結果多原子分子でも自由度5となる。

直線状であれば原子の数に関係なく自由度は5

非直線状多原子分子の自由度

非直線状となると先ほどまで対称性から考えていなかった回転運動の1軸が自由度を持つようになるので自由度は6になる。

非直線状多原子分子の自由度は6

振動について

以上の結論は分子を剛体モデルとして見た時の話である。一段階だけ現実に近いモデルを考えるとするとそれは振動の考慮である。多原子分子であれば分子間の振動が考えられる。上の結論はこの振動を考えていなかったが、それは常識的な範囲の温度では大きく関わってこないからである。(それとは別の話だが上の結論は実在気体と結構ずれる。あくまで理想気体のとして考えた場合の話。)

一応多原子分子の振動についても書いておく。通常$N$原子分子の自由度は$3N$になる。ここから並進運動と回転運動の自由度を引けば振動の自由度が得られる。よって

直線状多原子分子の振動の自由度$=3N-5$

非直線状多原子分子の振動の自由度$=3N-6$

問 ファンデルワールスの状態方程式

Van

a)

条件が示されているので条件を満たす定数を見つければ良い。結果は

$$
V_c = 3b, \ T_c = \frac{8a}{27Rb}, \ p_c = \frac{a}{27b^2}
$$

b)

ビリアル展開は理想気体と実在気体のズレを$1/V$または$P$のべき級数を使って補正しようとするもの。問題にあるビリアル展開は理想気体の方程式$pV_m=RT$の場合である。この定義に従ってファンデルワールスの状態方程式を$1/V_m$のべき級数で表す。まず理想気体のビリアル展開と同じ形をファンデルワールスの状態方程式で作ってみると

\begin{align}
pV_m &= \frac{RT}{1-b/V_m} - \frac{a}{V_m} \\
& = RT \left( \frac{1}{1-b/V_m} - \frac{a}{RTV_m} \right)
\end{align}

となる。ここで問題にヒントとして与えられた展開の公式を使えば

$$
pV_m = RT \left( 1 + \left(b - \frac{a}{RT} \right)\frac{1}{V_m} + \frac{b^2}{V_m^2} +... \right)
$$

となる。よって

$$ B = b - \frac{a}{RT}$$

B=0となる温度がボイル温度であるので、ボイル温度は

$$ T = \frac{a}{Rb}$$

これをa)で求めた$T_c$と比較すれば

$$ T = \frac{27T_c}{8}$$

c)

問題から与えられた式通り計算すれば

$$
\left( \rd{U}{V} \right)_T = \frac{R}{V_m-b}T-p
$$

2014年8月22日金曜日

波動のまとめ

波動方程式

波動の式が$f(x\mp ct)$のとき、

$$
\rdd{f}{t} = c^2 \rdd{f}{x}
$$

となる。3次元の場合は

$$ \rdd{f}{t} = c^2 \left( \rdd{f}{x} + \rdd{f}{y} + \rdd{f}{z} \right)$$

波動のエネルギー

物質の密度を$\rho$とすると

$$ I = \frac{1}{2} \rho \omega^2 {A_0}^2 c \ \ [W/m^2]$$

スネルの法則

媒質1から媒質2へ波が入った時、 入射波の速さを$c_1$、入射角を$\theta_1$、屈折波の速さを$c_2$、屈折角を$\theta_2$とすると

$$ \frac{\sin \theta_1}{\sin \theta_2} = \frac{c_1}{c_2} $$

うねり

$$\nu = |\ \nu_1 - \nu_2 |$$

ドップラー効果

振動数$\nu_0$の音波があったとき、観測者の速さを$u$、音源の移動の速さを$v$、音の進む速さを$c$とすると見かけの振動数$\nu$は次のようになる。

$$\nu = \frac{c-u}{c-v} \nu_0$$

光の屈折

光速を$c$、ある物質中での速さを$c'$としたとき

$$n = \frac{c}{c'}$$

を絶対屈折率または単に屈折率と呼ぶ。

媒質1から媒質2へ光が進んだとするとき、

$$\frac{\sin \theta_1}{\sin \theta_2} = \frac{c_1}{c_2} = n_{12}$$

となり$n_{12}$を媒質2の媒質1に対する屈折率という。

$c_1>c_2$の場合、入射角が

$$\sin \theta_1 = \frac{c_1}{c_2} = n_{12}$$

を満たす角度よりも大きい角度では全反射が起こる。

2014年8月19日火曜日

問 物理化学の問題

Phy

a)

$n$は主量子数、$l$は方位量子数、$m_l$は磁気量子数。

b)

n=2ということはL殻なので2sと2p軌道になる。n=2なのでlは0または1になる。l=0が2s軌道に相当する。l=0ならば$m_l$は0しかない。2s軌道は1つしかないから。よってまず$(2,0,0)$が選ばれる。続いてl=1のとき$m_l$は0と$\pm1$の2つになる。というのは2p軌道は3つの軌道を持っているので$m_l$は$-1,0,1$の3つとなる。よって$(2,1,0)$と$(2,1,\pm1)$が選ばれる。

c)

第一励起状態とは基底状態よりも一段階エネルギーが高い状態である。エネルギーは量子的にしか取れないのでこういった表現が可能。水素原子で基底状態よりも一段階高い状態とは電子が1つ上の軌道へ移動した時である。よって$\rm (2s)^1$となる。

d)

基底状態から第一励起状態にするにはエネルギーを与える必要がある。このエネルギーは光によって与えられる。光子のエネルギー$\epsilon$は$\epsilon = h \nu$であるからこれを使い122nmの光が持つエネルギーを計算すれば第一励起状態にするのに必要なエネルギー=エネルギー差がわかる。波長と振動数の間には光速を使って$c=\lambda \nu$という関係があるのでこれを光子のエネルギーの式に与えれば


\begin{align}
\epsilon = h \frac{c}{\lambda}
\end{align}

となる。プランク定数は与えられているので計算すれば$\epsilon = 1.6\times 10^{-18}[J]$となる。

e)

まず、水素原子のスペクトルの式を見る。


\begin{align}
\frac{1}{\lambda} = R \left( \frac{1}{n^2} - \frac{1}{m^2} \right)
\end{align}

これは主量子数nと主量子数mとの間の状態遷移の際の光の波長を求める式である。122nmというのはn=1,m=2で計算した場合に出る値である。では水素原子におけるイオン化エネルギーとは何かというと、電子を無限遠まで飛ばすのに必要な最小のエネルギーである。つまりmを無限にした時の波長$\lambda$の光が持つエネルギーこそがイオン化エネルギーになる。しかし今回リュードベリ定数が与えられていないので導出する必要がある。とはいっても$\lambda=122n,n=1,m=2$を当てはめるだけ。求まったら$n=1,m=\infty$として計算する。結果$m$の項は0になり消える。答えは$\lambda=91.2[nm]$と出る。光のエネルギーは波長が短いほど高くなるのでこれよりも短い波長であればイオン化する。

f)

Phy2

解答

ア 12

イ d

ウ 4f

エ $\rm 2p$

オ $\rm 2s$

カ $\rm sp^3$

キ 非共有電子対

ク 伝導帯

ケ 価電子帯

コ 禁制帯

サ 正孔

シ $e_g$

ス $t_{2g}$

セ 短くなる(?)

ちなみにシとスの答えだがこれはOh結晶場の場合である。これがTd結晶場の場合だと$e_g$と$t_{2g}$のエネルギーの高低は入れ替わる。

2014年8月18日月曜日

問 有機化学の問題

a)

ChemDraw  4

AはDiels-Alder反応。

Bは金属触媒による水素化。アルカンになる。

Cはハロゲン化水素の付加。この問題では臭化水素の付加。マルコフニコフ則に従う。

Dは過酸によるエポキシ化。エポキシ化でよく使われるのはmCPBA(メタクロロ過安息香酸)だがこの問題では過酢酸を使用している。

Eはハイドロボレーション-酸化。詳しい反応機構は省くがハイドロボレーションしたあと酸化させることにより逆マルコフニコフ則に従いシス付加したアルコールが得られる。


b)

i)

ChemDraw  5

まずブロモニウムイオンが生成し、そこへもう一つの臭素が攻撃して結合するがこのときトランスに付加する。

ii)


c)

通常フェニル基は電子吸引基である。しかし共鳴効果>電気陰性度なので共鳴効果が働くこの場合電子供与基として働く。結果オルト、パラ位の電子密度が上昇しオルト-パラ配向性を示す。

d)

ChemDraw  6

CIP則に従ってひたすら調べあげる。


Chem2

解答

ア 還元

イ 7

ウ 2

エ 8

オ 5

カ 4

キ 赤紫色

ク 無色

ケ 2

コ 2

サ 2

シ 6

ス 5

セ 2

ソ 10

タ 8

チ 希硫酸

ツ 0.01

問 混成状態を答えよ

Untitled4

解答

Aは両端の炭素が$\rm sp^2$、真ん中の炭素が$\rm sp$混成軌道。

Bは全て$\rm sp^3$混成軌道。

Cは$\rm N=C=O$の炭素が$\rm sp$で残りの2つは$\rm sp^2$混成軌道。