2014年8月24日日曜日

電磁気の問題に出てくる連立微分方程式

電場や磁場中を運動する電荷を持った物体の運動方程式によく出てくる連立微分方程式の解き方をまとめておく。

例えば$z$正方向に一様な磁場$\bm B$がかかっている時、質量$m$、電荷$q$の物体を原点からy軸正方向へ初速度$v$で打ち出した時の運動方程式は$m\bm v' = q(\bm v \times \bm B)$となる。外積は次の行列式で求まる。

$$
\left|
\begin{array}{ccc}
\bm i & \bm j & \bm k \\
v_x & v_y & v_z \\
0 & 0 & B
\end{array}
\right|
$$

結果

\begin{align}
m{v_x}' &= q v_y B \tag{1} \\
m{v_y}' &= - q v_x B \tag{2} \\
m{v_z}' &= 0
\end{align}

$(1)$を変形すると

$$ {v_y} = \frac{m}{qB} {v_x}' $$

となる。これを両辺$t$で微分すれば

$$ {v_y}' = \frac{m}{qB} {v_x}'' $$

これを$(2)$へ代入すると

\begin{align} {v_x}'' &= - \frac{q^2B^2}{m^2} {v_x} \\
&= - \omega^2 {v_x}\end{align}

となる。このように$\omega$をおけば単振動同じ式になるので${v_x}$は

$${v_x} = c_1 \cos \omega t + c_2 \sin \omega t$$

となる。次に$v_y$を求めるがこの時$v_x$と全く同じ手順で求めるとうまくいかない。計算自体はできるが積分定数の設定が正しく行えないのである。連立微分方程式なのだから$v_x$と$v_y$は互いに関係しあうので独立して求めてはいけないということ。なので$v_y$は求まった$v_x$を実際に当てはめて計算する。

まず$(1)$を整理すると

\begin{align} {v_y} &= \frac{m}{qB} {v_x}' \\
&= \frac{1}{\omega} {v_x}'
\end{align}

となる。$\omega$は先ほど置いたとおり。ここへ求まった${v_x}$を微分して代入すれば

\begin{align}
v_y &= \frac{1}{\omega} \left( -\omega c_1 \sin \omega t + \omega c_2 \cos \omega t \right) \\
&= - c_1 \sin \omega t + c_2 \cos \omega t
\end{align}

これで$v_x$と$v_y$が積分定数を通して結び付けれれた式が完成した。後は初期条件から積分定数を決定するだけ。$v_x$と$v_y$どちらの式から初期条件を与えても良いが結果から言うと$v_y$から求めたほうが手間が少ない。(やってみればわかる。)

まず$v_y$は$t=0$で$v$なので

$$v = c_2$$

続いて微分すると$y$方向の加速度が求まり、$t=0$で$y$方向への力はかかっていないので加速度0となり

$$ m \times 0 = - m \omega c_1 $$

なので$c_1=0$となる。

更に今度は積分する。初期位置が$y=0$ならば

\begin{align} 0 &= \frac{v}{\omega} \sin \omega t + c \\
&= c
\end{align}

よって最終的に

$$ v_y = v \cos \omega t$$ $$ y = \frac{v}{\omega} \sin \omega t $$

となる。また以上で求まった積分定数を$v_x$にも代入すると

$$v_x = v \sin \omega t$$

と一気に決定する。後は積分して$x$の積分定数だけ決定すれば良い。

$$ x = -\frac{v}{\omega} \cos \omega t + c $$ $$v = \frac{v}{\omega}$$

よって

$$ v_x = v \sin \omega t $$ $$ x = \frac{v}{\omega} (1 - \cos \omega t) $$

となる。

ここに更に電場もかかると例えば次のような運動方程式が成り立つ。

\begin{align}
m{v_x}' &= q v_y B \\
m{v_y}' &= qE - q v_x B \\
m{v_z}' &= 0
\end{align}

めんどくさいがこれも同様に解けば求まる。

2014年8月23日土曜日

理想気体の自由度

理想気体の自由度について簡潔にまとめる。

単原子分子

単原子分子の場合、自由度としては並進運動として$x,y,z$方向の3つの自由度が考えられる。回転については考えないので結論として単原子分子の自由度は3

単原子分子の自由度は3

直線状多原子分子

まず直線状の2分子原子を考える。このとき自由度は並進運動が$x,y,z$の自由度3。回転運動として3軸考えられるが1軸は対称性から考えないので自由度2。よって足して自由度は5となる。

次に直線状は変わらず原子の数だけ増やした場合を考える。直線状であるならば原子が増えたところで自由度は変わらないことがわかる。並進運動の自由度は無論変わらないが回転運動についても1軸は常に対称なので変わらず結果多原子分子でも自由度5となる。

直線状であれば原子の数に関係なく自由度は5

非直線状多原子分子の自由度

非直線状となると先ほどまで対称性から考えていなかった回転運動の1軸が自由度を持つようになるので自由度は6になる。

非直線状多原子分子の自由度は6

振動について

以上の結論は分子を剛体モデルとして見た時の話である。一段階だけ現実に近いモデルを考えるとするとそれは振動の考慮である。多原子分子であれば分子間の振動が考えられる。上の結論はこの振動を考えていなかったが、それは常識的な範囲の温度では大きく関わってこないからである。(それとは別の話だが上の結論は実在気体と結構ずれる。あくまで理想気体のとして考えた場合の話。)

一応多原子分子の振動についても書いておく。通常$N$原子分子の自由度は$3N$になる。ここから並進運動と回転運動の自由度を引けば振動の自由度が得られる。よって

直線状多原子分子の振動の自由度$=3N-5$

非直線状多原子分子の振動の自由度$=3N-6$

問 ファンデルワールスの状態方程式

Van

a)

条件が示されているので条件を満たす定数を見つければ良い。結果は

$$
V_c = 3b, \ T_c = \frac{8a}{27Rb}, \ p_c = \frac{a}{27b^2}
$$

b)

ビリアル展開は理想気体と実在気体のズレを$1/V$または$P$のべき級数を使って補正しようとするもの。問題にあるビリアル展開は理想気体の方程式$pV_m=RT$の場合である。この定義に従ってファンデルワールスの状態方程式を$1/V_m$のべき級数で表す。まず理想気体のビリアル展開と同じ形をファンデルワールスの状態方程式で作ってみると

\begin{align}
pV_m &= \frac{RT}{1-b/V_m} - \frac{a}{V_m} \\
& = RT \left( \frac{1}{1-b/V_m} - \frac{a}{RTV_m} \right)
\end{align}

となる。ここで問題にヒントとして与えられた展開の公式を使えば

$$
pV_m = RT \left( 1 + \left(b - \frac{a}{RT} \right)\frac{1}{V_m} + \frac{b^2}{V_m^2} +... \right)
$$

となる。よって

$$ B = b - \frac{a}{RT}$$

B=0となる温度がボイル温度であるので、ボイル温度は

$$ T = \frac{a}{Rb}$$

これをa)で求めた$T_c$と比較すれば

$$ T = \frac{27T_c}{8}$$

c)

問題から与えられた式通り計算すれば

$$
\left( \rd{U}{V} \right)_T = \frac{R}{V_m-b}T-p
$$

2014年8月22日金曜日

波動のまとめ

波動方程式

波動の式が$f(x\mp ct)$のとき、

$$
\rdd{f}{t} = c^2 \rdd{f}{x}
$$

となる。3次元の場合は

$$ \rdd{f}{t} = c^2 \left( \rdd{f}{x} + \rdd{f}{y} + \rdd{f}{z} \right)$$

波動のエネルギー

物質の密度を$\rho$とすると

$$ I = \frac{1}{2} \rho \omega^2 {A_0}^2 c \ \ [W/m^2]$$

スネルの法則

媒質1から媒質2へ波が入った時、 入射波の速さを$c_1$、入射角を$\theta_1$、屈折波の速さを$c_2$、屈折角を$\theta_2$とすると

$$ \frac{\sin \theta_1}{\sin \theta_2} = \frac{c_1}{c_2} $$

うねり

$$\nu = |\ \nu_1 - \nu_2 |$$

ドップラー効果

振動数$\nu_0$の音波があったとき、観測者の速さを$u$、音源の移動の速さを$v$、音の進む速さを$c$とすると見かけの振動数$\nu$は次のようになる。

$$\nu = \frac{c-u}{c-v} \nu_0$$

光の屈折

光速を$c$、ある物質中での速さを$c'$としたとき

$$n = \frac{c}{c'}$$

を絶対屈折率または単に屈折率と呼ぶ。

媒質1から媒質2へ光が進んだとするとき、

$$\frac{\sin \theta_1}{\sin \theta_2} = \frac{c_1}{c_2} = n_{12}$$

となり$n_{12}$を媒質2の媒質1に対する屈折率という。

$c_1>c_2$の場合、入射角が

$$\sin \theta_1 = \frac{c_1}{c_2} = n_{12}$$

を満たす角度よりも大きい角度では全反射が起こる。

2014年8月19日火曜日

問 物理化学の問題

Phy

a)

$n$は主量子数、$l$は方位量子数、$m_l$は磁気量子数。

b)

n=2ということはL殻なので2sと2p軌道になる。n=2なのでlは0または1になる。l=0が2s軌道に相当する。l=0ならば$m_l$は0しかない。2s軌道は1つしかないから。よってまず$(2,0,0)$が選ばれる。続いてl=1のとき$m_l$は0と$\pm1$の2つになる。というのは2p軌道は3つの軌道を持っているので$m_l$は$-1,0,1$の3つとなる。よって$(2,1,0)$と$(2,1,\pm1)$が選ばれる。

c)

第一励起状態とは基底状態よりも一段階エネルギーが高い状態である。エネルギーは量子的にしか取れないのでこういった表現が可能。水素原子で基底状態よりも一段階高い状態とは電子が1つ上の軌道へ移動した時である。よって$\rm (2s)^1$となる。

d)

基底状態から第一励起状態にするにはエネルギーを与える必要がある。このエネルギーは光によって与えられる。光子のエネルギー$\epsilon$は$\epsilon = h \nu$であるからこれを使い122nmの光が持つエネルギーを計算すれば第一励起状態にするのに必要なエネルギー=エネルギー差がわかる。波長と振動数の間には光速を使って$c=\lambda \nu$という関係があるのでこれを光子のエネルギーの式に与えれば


\begin{align}
\epsilon = h \frac{c}{\lambda}
\end{align}

となる。プランク定数は与えられているので計算すれば$\epsilon = 1.6\times 10^{-18}[J]$となる。

e)

まず、水素原子のスペクトルの式を見る。


\begin{align}
\frac{1}{\lambda} = R \left( \frac{1}{n^2} - \frac{1}{m^2} \right)
\end{align}

これは主量子数nと主量子数mとの間の状態遷移の際の光の波長を求める式である。122nmというのはn=1,m=2で計算した場合に出る値である。では水素原子におけるイオン化エネルギーとは何かというと、電子を無限遠まで飛ばすのに必要な最小のエネルギーである。つまりmを無限にした時の波長$\lambda$の光が持つエネルギーこそがイオン化エネルギーになる。しかし今回リュードベリ定数が与えられていないので導出する必要がある。とはいっても$\lambda=122n,n=1,m=2$を当てはめるだけ。求まったら$n=1,m=\infty$として計算する。結果$m$の項は0になり消える。答えは$\lambda=91.2[nm]$と出る。光のエネルギーは波長が短いほど高くなるのでこれよりも短い波長であればイオン化する。

f)

Phy2

解答

ア 12

イ d

ウ 4f

エ $\rm 2p$

オ $\rm 2s$

カ $\rm sp^3$

キ 非共有電子対

ク 伝導帯

ケ 価電子帯

コ 禁制帯

サ 正孔

シ $e_g$

ス $t_{2g}$

セ 短くなる(?)

ちなみにシとスの答えだがこれはOh結晶場の場合である。これがTd結晶場の場合だと$e_g$と$t_{2g}$のエネルギーの高低は入れ替わる。

2014年8月18日月曜日

問 有機化学の問題

a)

ChemDraw  4

AはDiels-Alder反応。

Bは金属触媒による水素化。アルカンになる。

Cはハロゲン化水素の付加。この問題では臭化水素の付加。マルコフニコフ則に従う。

Dは過酸によるエポキシ化。エポキシ化でよく使われるのはmCPBA(メタクロロ過安息香酸)だがこの問題では過酢酸を使用している。

Eはハイドロボレーション-酸化。詳しい反応機構は省くがハイドロボレーションしたあと酸化させることにより逆マルコフニコフ則に従いシス付加したアルコールが得られる。


b)

i)

ChemDraw  5

まずブロモニウムイオンが生成し、そこへもう一つの臭素が攻撃して結合するがこのときトランスに付加する。

ii)


c)

通常フェニル基は電子吸引基である。しかし共鳴効果>電気陰性度なので共鳴効果が働くこの場合電子供与基として働く。結果オルト、パラ位の電子密度が上昇しオルト-パラ配向性を示す。

d)

ChemDraw  6

CIP則に従ってひたすら調べあげる。


Chem2

解答

ア 還元

イ 7

ウ 2

エ 8

オ 5

カ 4

キ 赤紫色

ク 無色

ケ 2

コ 2

サ 2

シ 6

ス 5

セ 2

ソ 10

タ 8

チ 希硫酸

ツ 0.01

問 混成状態を答えよ

Untitled4

解答

Aは両端の炭素が$\rm sp^2$、真ん中の炭素が$\rm sp$混成軌道。

Bは全て$\rm sp^3$混成軌道。

Cは$\rm N=C=O$の炭素が$\rm sp$で残りの2つは$\rm sp^2$混成軌道。

問 酸性の強さ

Untitled3

解答

まず一般的に酸性度は「カルボン酸>フェノール>アルコール」である。この観点で5つの物質を分類すると

B,C > D,E > A

となる。ここでB,CとD,Eそれぞれどちらが強い酸か調べる。まずBとCであるがこの2つの違いはFかClかである。ではFとClの違いで酸性度に影響を及ぼすものは何かというと電気陰性度である。共役塩基はプロトンが脱離したものであるから共役塩基はマイナスに帯電しているといえる。となると電子をいかに安定に保持するかが要になる。FとClはFの方が電気陰性度が高いのでより電子を引く。結果Fがある方が安定なのでB>Cとなる。

続いてDとE。Dはニトロ基が付いているフェノールなので4-ニトロフェノール。Eはただのフェノール。ニトロ基は共鳴していてるが、酸素原子2つで共鳴しているので非常に強い電子吸引性をもつ。となるとD>E。

というわけで

B>C>D>E>A

有機化学まとめ

有機化学中心にまとめ。

アルコールの酸化

・第一級アルコール→アルデヒド→カルボン酸

・第二級アルコール→ケトン

・第三級アルコール→酸化されない

不飽和

有機化学において不飽和といえばそれは二重結合や三重結合(不飽和結合)を持っていることである。不飽和結合の定義としては隣接する原子間で2価以上で結合している結合のことなのでつまり二重結合や三重結合となる。

酸性度の強さ

一般に酸性度の強さは

カルボン酸>フェノール>アルコール

となる。基本的に共役塩基の安定性が高いほど酸性度は高い。つまり共鳴があると酸性度が高い。カルボン酸の共役塩基は2つの酸素間で共鳴が起こるのでとても安定。フェノールはベンゼン環内で共鳴が起きるのでこれも安定。しかし酸素どうして共鳴するほうが安定なので安定性ではカルボン酸の方が高い。そしてアルコールはπ電子がなく、また酸素原子が1つしかないので共鳴しない。

誘起効果(I効果)

誘起効果とは、ある原子が結合を介して別の原子に静電気的な効果を与えることである。例えば電気陰性度が高い原子があるとアルコールが電離した時、Oにある電子が引き寄せられる。

共鳴効果(R効果)

共鳴効果はR効果とも呼ばれる。

共役ジエン

共役ジエンとは二重結合が単結合一つに隔てられているジエンのこと。1-3ブタジエンなど。二重結合が単結合2つ以上に隔てられてしまうと非共役ジエンという。

Diels-Alder反応

Diels-Alder(ディールスアルダー)反応は共役ジエンとアルケンの混合物を加熱すると不飽和の6員環を生成する反応のこと。

ハロゲン

・塩基性の強さ

$\rm F^->Cl^->Br^->I^-$

・求核性の強さ

$\rm I^->Br^->Cl^->F^-$

・脱離能の高さ

$\rm I^->Br^->Cl^->F^-$

共鳴効果と電気陰性度

電子吸引性と電子供与性の両方を持つ場合、どちらの効果がより大きく現れるかは状況による。まず、共鳴効果>電気陰性度であることを考える。共鳴効果が起こらない場合であれば電気陰性度により電子吸引基として働く。しかしベンゼン環など共鳴効果が起こる場合には先の共鳴効果>電気陰性度により共鳴効果が大きく現れる。となると電子吸引性が隠れ電子供与基として働くわけである。

ただしハロゲンは逆になる。ハロゲンの場合誘起効果>共鳴効果となり電子吸引性の方が大きくなるので注意。このため例えばベンゼンの置換反応では不活性化を示すが共鳴効果によりオルト-パラ配向性を示すという変わり種。

燃焼熱と安定性

幾何異性体であれば燃焼熱が小さいほど安定である。

$\rm S_N1$・$\rm S_N2$・$\rm E1$・$\rm E2$

$\rm S_N1$$\rm S_N2$$\rm E1$$\rm E2$
機構一分子求核置換反応二分子求核置換反応一分子脱離反応二分子脱離反応
反応速度基質の濃度のみで決まる基質と試薬の両方の濃度によって決まる基質の濃度のみで決まる基質と試薬の両方の濃度によって決まる
生成物エナンチオマーが等量ずつ出来上がるラセミ体(実際は完全なラセミ体になるわけではないらしい)立体が反転(ワルデン反転)する
反応性第一級>第二級>第三級第三級>第二級>第一級第三級>第二級>第一級第三級>第二級>第一級

炭素化合物の分子式

アルカン $C_nH_{2n+2}$

アルケン $C_nH_{2n}$

アルキン $C_nH_{2n-2}$

シクロアルカン $C_nH_{2n}$

ジクロアルケン $C_nH_{2n-2}$

その他Wikibooksにあり

不飽和度

不飽和度は水素不足指数とも呼ばれる。公式は


\begin{align}
不飽和度 = \frac{2C+2-H-X+N}{2}
\end{align}

となる。Cは炭素の数、Hは水素の数、Xはハロゲン原子の数、Nは窒素の数。Hはヒドロキシ基OHのHもカウントする。酸素などの16族原子はカウントしない。

不飽和度は構造からも計算できる。二重結合は1、三重結合は2、環構造は1となるのでそれぞれ単純に数を数えて和を撮ればよい。環同士のくっつき方や環中の二重結合などそういった類のものは一切考える必要はなく単純に二重結合、三重結合、環の数を数えれば良い。例えばバンコマイシンは二重結合が23個、環が10個あるので不飽和度は33と計算できる。

ワッカー酸化

Untitled Document 1

ワッカー酸化は塩化パラジウムと塩化銅を触媒としてアルケンをカルボニル化合物へ酸化する化学反応。基本的に内部アルケンは反応性が低く末端アルケンしか反応しない。

ニトロ化

ニトロ化はベンゼンと、濃硝酸と濃硫酸の混酸の反応で起こる。ニトロニウムイオンが求電子試薬として働いてベンゼンに付加しカルボカチオン中間体を生成する。ここからプロトンが脱離してニトロ化が完了する。

水和物

化学式中に点"$\cdot$"があるのは水和物であることを示している。水和物とは結晶中に水分子が取り込まれているもの。

2014年8月17日日曜日

問 塩基性の強さ

Untitled2

解答

まずAはアザシクロペンタン(ピロリジン)、Bはピロール、Cはピリジンである。

答えから言うと

Aアザシクロペンタン>Cピリジン>Bピロール

となる。

まずBのピロールの塩基性が弱い理由はNが芳香族化に関与しているからである。ピロールはCから4つ、Nから2つの計6個のπ電子を持つので芳香族性を示す。この状態で安定なので塩基性は低い。以下がピロールの電子配置。

$\rm 2p$ $\fbox{$\uparrow \downarrow $}$
$\rm sp^2$ $\fbox{$\uparrow$}$ $\fbox{$\uparrow$}$ $\fbox{$\uparrow$}$
$\rm 1s$ $\fbox{$\uparrow \downarrow $}$

$\rm sp^2$の3つの不対電子で2つのCと1つのHと結合している。そして$\rm 2p$軌道の非共有電子対と炭素のπ電子で芳香族を形成しているわけである。ここへプロトンが付加するとなると、$\rm sp^2$軌道は埋まっているので残る$\rm sp$軌道へ付加するしかない。しかし$\rm 2p$は芳香族性を示すために必要なπ電子。これを使ってプロトンが付加するとπ電子がなくなる。つまり$\rm sp^2$から$\rm sp^3$軌道になってしまうわけである。となるともはや芳香族性を示せなくなる。

続いてCのピリジンを見てみる。ピリジンの電子配置は以下のとおり。

$\rm 2p$ $\fbox{$\uparrow$}$
$\rm sp^2$ $\fbox{$\uparrow \downarrow $}$ $\fbox{$\uparrow$}$ $\fbox{$\uparrow$}$
$\rm 1s$ $\fbox{$\uparrow \downarrow $}$

ご覧のとおり$\rm sp^2$軌道のうち、不対電子となっている2つの電子で隣の炭素2つとσ結合している。$\rm 2p$軌道の不対電子は他のCと同様にπ結合に使われている。残る$\rm sp^2$軌道の対になった電子は非共有電子対になる。なのでここへプロトンが付加しようとすると残ったこの非共有電子対を使うのでπ結合には何の影響も及ぼさない。ピロールとピリジンにはこのような違いがある。

Aのアザシクロペンタンは芳香族でない。ちなみに芳香族でないものを脂肪族という。ようは普通の炭素化合物。結論から言えば一般に脂肪族の方が芳香族よりも塩基性が強い。それはアルキル基が電子供与基だからである。芳香族は共役により電子密度が均一化されている(それゆえ安定なのだが)。対してアザシクロペンタンではアルキル基が電子を供与してくれるためNの電子密度が高くなる。そうなると求電子的な付加がしやすくなるので結果アザシクロペンタは塩基性が高くなる。

以上の強さの比較よりAアザシクロペンタン>Cピリジン>Bピロールとなる。

2014年8月16日土曜日

問 酸化・還元・付加・置換の分類

Untitled

問 (1)から(6)の反応はそれぞれ、酸化、還元、付加あるいは置換反応のいずれかに分類できる。このうち、酸化反応に分類できるものを全てあげよ。

(1)から順に調べていきたいと思います。

(1)

これはアルケンの水和(水の付加)である。この反応について少し書いておく。この反応は鉱酸存在下で起き、二重結合に水が付加する。オキソニウムイオン中間体からプロトンが脱離してアルコールになる。マルコフニコフ則に従う。

(2)

これは脱水素化である。分類としては酸化。Hを失っているので酸化となるが、一応酸化数も数えておく。まず反応前はHが8個なので+8で合計0にするためCの酸化数は$-4/3$。…これはあまり正しくない。酸化数は整数でなければいけない。これは酸化数$-1$の炭素4つと$-2$の炭素2つで計$-8$である。あくまで平均が$-4/3$。反応後はHが6個で+6、-1のCが6個でプラマイゼロ。炭素の酸化数が(平均の)$-4/3$から$-1$へ$+1/3$増えているので酸化となる。

(3)

これは(2)の逆の水素化。なので還元。Hを得ているので(以下略(2)と同様にできる。

(4)

はおそらく脱離反応によってアルケンへ変化し、その後エポキシ化したと思われる(正直よくわからない。その後の設問で(4)は$\rm S_N2$型の分子内反応が進行し、トランス型のエポキシドが立体選択的に得られるとの記述があるのでとなると脱離ではなく求核置換反応か)。酸化数を数えてみればわかるが炭素の酸化数は変化していないので酸化ではないと思うが、エポキシ化自体は過酸による酸化なのでわからない。

(5)

反応はよくわからないがとりあえず酸化。理由はHを失っている以下略。

(6)

$\rm OH$が$\rm Cl$に置換しているので置換反応(おそらく)。

結論

酸化であると思われるのは(2)と(5)。還元なのは(3)。付加は(1)で置換は(6)。(4)についてはわからない。

2014年8月15日金曜日

結晶構造の問題

問 立方晶閃亜鉛鉱型(硫化亜鉛型)構造の単位格子を下図に示す。この構造では、面心格子の格子点(黄色)に陰イオン、下図紫の位置に陽イオンが存在する。以下の文章の空欄$\fbox ア$から$\fbox カ$に適切な数値を入れよ。

ただし$\sqrt{2} = 1.41, \sqrt{3}=1.73$、アボガドロ定数$6.0\times 10^23 \rm mol^{-1}$とし、$1Å=10^{-10}m$である。

Sphalerite unit cell 3D balls

a) 陽イオンの配位数は$\fbox ア$である。

b) 単位格子中に含まれる陰イオンと陽イオンの数はそれぞれ$\fbox イ$、$\fbox ウ$である。

c) 式量90の化合物がこの型の結晶構造をもち、密度が$4.0\ \rm g \ cm^{-3}$であるとき、単位格子の体積は$\fbox エ$$Å^{3}$である。

d) 単位格子の一辺の長さが5.20Åの場合、陰イオンと陽イオンの距離は$\fbox オ$Åである。

e) 陽イオンと陰イオンを互いに接触する球体と考え、陰イオンどうしも接している場合、陰イオンと陽イオンの半径比$(r^- / r^+)$は$\fbox カ$である。

解答

陽イオンから陰イオンを見ると接するのは4つ。よって$\fbox ア$は4

陽イオンの中心は光子中に4つあり、また球の全てが光子中に存在している。陰イオンは8つの頂点に$1/8$球が8個あり、6つの面の中央に半球が6つある。よって$\fbox イ$は4、$\fbox ウ$も4。

$\fbox エ$は保留

Untitled 1 01

図は立方体の対角線で切った断面図である。この図に従って求めれば。距離$r$は

\begin{align} r &= \sqrt{ \left( \frac{5.20}{4} \right)^2 + \left( \frac{5.20 \times 1.41}{4} \right)^2 } \\ & = 2.2 \end{align}

よって$\fbox オ$は2.2

$r^+ + r^- = r$なのだから両辺$r^-$で割れば

$$\frac{r^+}{r^-} = \frac{r}{r^-} - 1$$

$r^-$はさっき出てきたように格子の一辺を$l$とすれば

$$ r^- = \frac{\sqrt{2}l}{4} $$

rも同様に

$$ r = $$

とわかっているので計算できる。後は分母分子入れ替えれば答えが出る。$\fbox カ$は4.4

2014年8月14日木曜日

化学まとめ

化学のまとめ

アルデヒド

Aldehyde


アルデヒドはカルボニル炭素に水素原子が一つ置換した構造を持つ有機化合物。一般式は$\rm{R-CHO}$。RもHのときがホルムアルデヒド。Rがメチル基だとエタナールまたはエチルアルデヒド、そして通称アセトアルデヒド。

ケトン

Ketone general


ケトンは一般式$\rm{R−C(=O)−R'}$で表される構造を持つ有機化合物。R、R'ともにメチル基の時がアセトンまたはプロパノンである。

エーテル

Ether general


エーテルは一般式$\rm R−O−R'$で表される構造を持つ有機化合物である。$\rm -O-$をエーテル結合という。

エノール

Enol


エノールはアルケンの二重結合炭素の片方の炭素にヒドロキシ基が結合したアルコール。ただし非常に不安定ですぐにケト-エノール互変異性を起こしてケトンになる。

エステル

Ester


エステルは、有機酸または無機酸のオキソ酸とアルコールまたはフェノールのようなヒドロキシル基を含む化合物との縮合反応で得られる化合物。

エポキシド

ChemDraw  2

エポキシドは3員環のエーテルであるオキサシクロプロパン(オキシラン)を持つ化合物。$sp^3$混成軌道は結合角が109.5°だが図の通り60°で結合しているのでとにかく不安定。そのため反応性が高く、簡単に開裂する。

アルコキシド

Alkoxide

アルコキシドはアルコールの共役塩基であるアニオンのこと。共役塩基の説明は別項参照。ようするにアルコールの$\rm OH$から$\rm H^+$が脱離し$\rm O^-$となったもの。

フェノキシド

フェノキシドはフェノール類の共役塩基のこと。ようはアルコキシドのRが芳香族のときがフェノキシド

共役酸・共役塩基

物質から水素イオンがひとつ付加したものをその物質の共役酸という。逆に水素イオンがひとつ脱離したものを共役塩基という。

ジカルボン酸・トリカルボン酸

ジカルボン酸はカルボキシル基$\rm COOH$を2つ持つもの。$\rm R$を挟むように2つのカルボキシル基が出ている。カルボキシル基が3つあるとトリカルボン酸となる。

酸・塩基

・アレニウスの定義

水$\rm H_2O$に解けたとき、$\rm H^+$の濃度を高めるものを酸、$\rm OH^-$の濃度を高めるものを塩基という。

・ブレンステッド・ローリーの定義

$\rm H^+$を与えるものが酸、$\rm H^+$を受け取るものが塩基という。

・ルイスの定義

電子対を受け取るものが酸、電子対を供与するものが塩基という。

酸化還元反応

酸化還元反応とは電子の授受がある反応のこと。酸化と還元は同時に起こる。

酸化=電子を失う(水素原子を失う・酸素原子を受け取る)

還元=電子を受け取る(水素原子を受け取る・酸素原子を失う)

酸化剤=相手を酸化するので自分は還元される

還元剤=相手を還元するので自分は酸化される

酸化剤・還元剤はあくまで相手との関係で決まるものなので、一般に酸化剤と言われる物質でも相手の物質によっては還元剤として働くこともある。

酸化数のまとめ

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$\rm pH$・$pK_a$・$K_a$

化学における$\log$は底が10の常用対数のことをいう。数学では単純に$\log$といえば底がeの自然対数$
\rm ln$をいうので数学寄りの人間は注意。


$${\rm pH} = - \log[H^+]$$
$$K_a = \rm \frac{[A^-][H^+]}{[AH]}$$
$$ pK_a = - \log K_a $$
$$ {\rm pH} = pK_a + \rm \log \frac{[A^-]}{[AH]} $$
$$ \frac{K_a}{\rm [H^+]} = \rm \frac{[A^-]}{[AH]} $$
緩衝能は$pK_a$と$\rm pH$が近い程大きくなる。また、${\rm pH} = pK_a$のとき酸$\rm HA$は50%解離する。

また、$pX$という変数が意味するものは$pX = - \log X$。

VSEPR(原子価殻電子対反発)理論

電子対間の反発の強さは次の順になる


(結合電子対$-$結合電子対) $<$ (結合電子対$-$非共有電子対) $<$ (非共有電子対$-$非共有電子対)

例えば$\rm H^2O$はe結合電子対2つ、非共有電子対2つである。本来それぞれの電子対はクーロンの法則に従い、お互いに等しい力を及ぼし合う正四面体の頂点に位置するよう配置される。しかし結合電子対と非共有電子対とで反発の度合いが違う。上に書いた順番が示すのは非共有電子対はよく反発し、結果として多くの空間を専有するということ。よって共有電子対は非共有電子対に押され狭い空間へ、つまり角度が小さくなる。正四面体の頂点に来る場合は109.5°だがそれよりも小さい104.5°になる。

$n$分子形混成分子例
2直線型$\rm sp$$\rm BeCl_3$
3平面三角形型$\rm sp^2$$\rm BCl_3$
4正四面体型$\rm sp^3$$\rm CH_4$
平面正方形型$\rm dsp^2$$\rm [Cu(NH_3)_4]^{+2}$
5三方両錐型$\rm dsp^3$$\rm PCl_5$
6正八面体型$\rm d^2sp^3$$\rm SF_6$
7五方両錐型$\rm d^3sp^3$$\rm IF_7$
8正十二面体型$\rm d^4sp^3$$\rm [Mo(CN)_8]^{4-}$

軌道のs性

混成軌道においてs軌道の占める割合がs性である。s性は次の通りになる。


$sp$混成軌道=50%

$sp^2$混成軌道=33%

$sp^3$混成軌道=25%

s軌道は原子に近いのでs性が高いほど安定となる。

フィッシャー投影式

Fischer

左がフィッシャー投影式で右がその実際の意味を示した図。右は破線-くさび形記法で塗りつぶしが手前、破線が奥に伸びていることを示す。

元素の性質

定義

・イオン化エネルギー:大きいほど陽イオンになりにくい

・電気親和力:大きいほど陰イオンになりやすい

・電気陰性度:小さいほど陽イオンになりやすく大きいほど陰イオンなりやすい

また、第一イオン化エネルギーと第二イオン化エネルギーがある。

・第一イオン化エネルギー:電子を一つ取り去って1価の陽イオンにするとき

・第二イオン化エネルギー:1価の陽イオンから2価の陽イオンにするとき

周期律

周期表右上に行くほど

・イオン化エネルギー:増大傾向にあるが多少変動あり

・電気陰性度:増大傾向にあるが多少変動あり

・電気陰性度:きれいに増大する

希ガスはイオン化エネルギーが大きく、また電気親和力も小さい(出しにくく奪いにくい)。

分子の極性

共有電子対は電気陰性度が大きい原子に引き寄せられ、分子に極性が現れる。

よくでる原子の電気陰性度。ポーリングの電気陰性度では希ガスの値はなし。

O 3.4

Cl 3.2

N 3.0

C 2.6

H 2.2

第二族Li~Fは順に電気陰性度が大きくなり、BとCの間にHが入る。ClはNとOの間に入る。

原子の大きさ

原子の大きさは

・同一周期では左に行くほど大きい

・同一族では下に行くほど大きい

二量体

Carboxylic acid dimers

二量体とは分子が2つ結合したもの。共有結合や水素結合などで結合している。カルボン酸は$\rm OH$と$\rm CO$が水素結合している。図はカルボン酸の二量体。水も水素結合して二量体を形成している。

結合力の比較

共有結合を100としたとき

共有結合100 > 水素結合10 > ファンデルワールス力1

スレーターの規則

有効核電荷を$Z^*$、陽子数を$Z$、遮蔽定数を$S$とすると


\begin{align}
Z^* = Z - S
\end{align}

となる。

原子

$^A_ZX$

$Z$が陽子数(原子番号)で$A$が質量数。よって中性子数$N=A-Z$となる。

同位体 $Z$が等しく$N$が異なる核。つまり同じ原子番号で質量数が異なるもの。

周期表

1から18族まである。18族(希ガス)の元素はHeを除いてp軌道まで埋めて閉殻構造となる。これは軌道のエネルギーが数字通りでないため。例えば第5周期の希ガスXeは6p軌道まで埋める。第6周期は7s軌道から始める。ランタノイドとアクチノイドは15個ずつ。

典型元素は1族2族と12族から18族で遷移元素は3から11族まで。4周期目から割り込む3から12族のうち12族だけ典型元素なので注意。

主殻副殻
K1s
L2s, 2p
M3s, 3p, 3d
N4s, 4p, 4d, 4f
O5s, 5p, 5d, 5f
P6s, 6p, 6d
Q7s, 7p

ちなみに右上から左下に辿る順にエネルギーが高くなる。例えば3pの次は3dではなく左下の4sへ続く。4sは左下がないので3dへ戻りそこからまた左下へとたどっていく。

$\alpha, \beta, \gamma$崩壊

$\alpha$崩壊とはアルファ粒子を放出する放射性崩壊。アルファ粒子とは陽子2つ中性子2つ、つまりHe原子核のこと。式で表せば$\rm _2^4He^{2+}$。アルファ崩壊が起きると原子番号と中性子が2つずつ減り、質量としては4減る。

$\beta$崩壊とは原子核の中性子が電子を1つ放出し陽子へ変化する放射性崩壊。質量は変わらないが原子番号が増える。ちなみにこのときニュートリノも放出されている。

$\gamma$崩壊とは励起された原子核がガンマ線を放出する放射性崩壊。ガンマ線とは波長が10pmよりも短い電磁波である。$\gamma$崩壊は核種が変わらない。

量子数

$n$:主量子数($n=1,2,3,...$)→K,L,M,N...殻を決定する

$l$:方位量子数($l=0,1,...,n-1$)(軌道角運動量量子数)→s,p,d,fなど軌道を決定する

$m_l$:磁気量子数($m_l=0,1,...,\pm l$ )(軌道磁気量子数)→$p_x,p_y,p_z$などを決定する

$m_s$:スピン磁気量子数→スピンの向きを決定する

これら4つの量子数により電子の量子状態$(n,\ l,\ l_m,\ l_s)$が決定する。また、同一の量子状態をとることができない。これをパウリの排他原理という。また、同じエネルギー準位であれば別々の軌道($m_l$が異なる)にスピン磁気量子数$m_s$を揃えながら入る。これをフントの規則という。

光電効果

光電効果で重要なのは、ある一定の振動数$\nu_0$以上与えた時に光電子が飛び出たならばそれよりも低い振動数では光の強さを強くしようが光電子は飛び出さない。逆にそれよりも高い振動数であればどんなに弱い光でも飛び出す。光子のエネルギーは振動数のみによって決定される。ちなみに光の強度とは光子の数のこと。

仕事関数$W$は金属中から電子1個を取り出すのに必要な最小のエネルギーを意味する。正確には真空中に取り出すときのエネルギーである。

分子の衝突

まず衝突断面積というものを定義する。これは2つの分子(ここでは球形であるとした場合)の半径の和を半径とする円の面積。これはこの円の中心に分子Aを置いた時、もう一つの分子Bが衝突する範囲である。この円の中に分子Bの中心があれば衝突する。よって衝突の頻度は

$$ \overline{v_a} \times 衝突断面積 \times Bの濃度 $$

つまり分子Aが単位時間あたりに進む間に衝突範囲内にある分子Bの数である。

ファンデルワールスの状態方程式

\begin{align}
\left( P + \frac{n^2a}{V^2} \right)(V - nb) = nRT
\end{align}

aは分子間力の係数でbが自身の体積による影響の係数。これらは分子の大きさなどによって個別に決まる。

標準電極電位とギブスの自由エネルギー

標準電極電位$E^0$とギブスの自由エネルギーの変化量$\varDelta G$の関係式は

$$\varDelta = -nFE^0$$

となる。ここで$F$はファラデー定数で$n$は電子にかかる係数。$\varDelta G<0$のとき反応は自然と進行する。

電磁気まとめ

電磁気の細かな項目のまとめ

電気双極子モーメント


電気双極子モーメント $\bm{p} = q \bm{l}$


$\bm{p}$は$-q$から$+q$へ向かうベクトル


偶力 $\bm{N} = \bm{p} \times \bm{E}$


位置エネルギー $U = - \bm{p} \cdot \bm{E} $


位置エネルギーは$\bm{p}$と$\bm{E}$が垂直な面が基準で、そこから回転させるのにかかった仕事として求める。

磁気双極子モーメント


磁気双極子モーメント $\bm{m} = q_m \bm{l}$


強さ$M$で磁化された断面積$S$の磁石 $q_m = MS$


偶力 $\bm{N} = \bm{m} \times \bm{B}$


位置エネルギー $U = - \bm{m} \cdot \bm{B} $


位置エネルギーは$\bm{p}$と$\bm{E}$が垂直な面が基準で、そこから回転させるのにかかった仕事として求める。

分極ベクトル

分極した誘電体の単位体積あたりの双極子モーメント$\bm P$を分極ベクトルまたは誘電分極という。単位体積あたりの分子数を$n$とると

$$ \bm P = n\bm p = nq\bm l$$

となる。ここで面の単位法線ベクトルを$\bm n$とすれば表面密度$\sigma_P$は

$$ \sigma_P = \bm P \cdot \bm n$$

となる。分極ベクトルは実験によると電界に比例し、

$$ \bm P = \chi_e \epsilon_o \bm E $$

と表せる。$\chi_e$は電気感受率と呼ばれる。

誘電体が作る電束密度

分極している誘電体内部の真電荷$Q$と分極電荷$Q_p$を含む任意閉曲面$S$について以下が成り立つ。


\begin{align}
\epsilon_0 \oint_S \bm E \cdot d\bm S &= Q + Q_p \\
\oint_S (\epsilon_0 \bm E + \bm P ) \cdot d\bm S &= Q \\
\oint_S \bm D \cdot d\bm S &= Q \\
\end{align}
$$ ( \bm D = \epsilon_0 \bm E + \bm P) $$

結果$\bm D$は閉曲面内の真電荷$Q$のみによって決定されることがわかり、これを電束密度という。

誘電率と比誘電率


\begin{align}
\bm D &= \epsilon_0 (1+\chi_e)\bm E \\
&= \epsilon \bm E
\end{align}

$\epsilon$を誘電率と呼び、

$$\epsilon_r = \frac{\epsilon}{\epsilon_0} = 1+ \chi_e$$

を比誘電率という。

誘電体の境界面

電界の接線成分は境界面の両側で等しい

$$ E_1 \sin \theta_1 = E_2 \sin \theta_2 $$

電束密度の法線成分は境界面の両側で等しい

$$ D_1 \cos \theta_1 = D_2 \cos \theta_2 $$

誘電体を含むコンデンサ

$$ C = \epsilon_r C_0$$

真空の静電容量に比誘電率をかければよい。

磁性体の作る磁界

磁性体を等価な束縛電流$I_M$に置き換えた時ビオ・サバールの法則は次のようになる。

\begin{align}
d\bm B = \frac{\mu_0}{4 \pi} \frac{(I+I_M)d\bm s \times \bm r}{r^3}
\end{align}

また以下が成り立つ。

\begin{align}
\oint \bm B \cdot d \bm S = 0
\oint_c \bm B \cdot d \bm l = \mu_0 (\sum I + \sum I_M)
\end{align}

磁性体を含む磁界

真電流のみに依存する量として$\bm H$を定義すると以下になる。

$$\bm H = \frac{\bm B}{\mu_0} - \bm M$$

また

$$ \oint_c \bm H \cdot d \bm l = \sum I $$

磁化率と透磁率

$$ \bm M = \chi_m \bm H $$

となり、$\chi_m$は物質に固有な値で磁化率という。

また、

\begin{align}\bm B &= \mu_0 (1 + \chi_m)\bm H \\
&= \mu \bm H
\end{align}

$\mu$を磁性体の透磁率といい

$$ \mu_r = \frac{\mu}{\mu_0} = 1 + \chi_m $$

を比誘電率という。

磁性体の境界面

磁界の接線成分は境界面の両側で等しい

$$ H_1 \sin \theta_1 = H_2 \sin \theta_2 $$

磁束密度の法線成分は境界面の両側で等しい

$$ B_1 \cos \theta_1 = B_2 \cos \theta_2 $$

反磁界

磁性体を磁界$\bm H_O$の中に置いた場合、磁性体内部には$\bm H_0$の他に磁化$\bm M$による磁界$\bm H'$が存在する。$\bm H'$は常に$\bm H_0$と逆向きであるので反磁界と呼ばれる。

$$ \bm H' = -N \bm M $$

$N$は反磁界定数と呼ばれる。

$$ \bm H = \bm H_0 + \bm H' = \bm H_0 - N \bm M $$

磁界内のコイルの受ける力


磁束密度$\bm{B}$の一様な磁界中に、面積Sのコイルを、面の法線と磁界のなす角が$\theta$となるように置き、電流$\ I $を流す。


モーメント$ \bm{N} = \bm{m} \times \bm{B}$


磁気モーメント$ \bm{m} = I \bm{S}$


磁気モーメントの大きさは$IS$で向きは面法線上で電流の向きの右ねじの法則。

電流


$I = nqvS$

2014年8月13日水曜日

陰関数の極値

陰関数の極値は少し厄介。まず、陰関数定理というのがあって諸々の条件を満たす時$f(x, y) = 0$は$y=\varphi (x)$となる関数になる。この辺りはよくわからないので置いておくが、とりあえず$y=\varphi (x)$となるので極値が考えられる。

まず、$y’$を求める。陰関数の微分は

$$\frac{dy}{dx} = - \frac{f_x}{f_y}$$

である。そして微分が0の点が停留点なのだから結局

$$f_x = 0$$を求めればよい。このとき求めた点$(a,b)$を$f_y$に代入した時$f_y=0$となってしまう場合は特異点なので除外する。($y’= \infty$になることからもだめだと気づける。)

続いて通常の極値と同様に2階微分をして本当に極値が調べる。通常の陰関数の2階微分はすごくめんどくさい…。けど今は$f_x=0$の条件で進めているのでいくつか項が消えてすごくシンプルになる。

$$\frac{d^2 y}{dx^2} = - \frac{f_{xx}}{f_y}$$

たったこれだけである。候補として上がった停留点を全て代入しそれぞれ2階微分の値を求める。無論単なる2階微分と同じなので通常の極値同様に

\begin{align} \frac{d^2 y}{dx^2} > 0 \Rightarrow 極小値 \\ \frac{d^2 y}{dx^2} < 0 \Rightarrow 極大値 \end{align}

注意としては$f_{xx}$の$-$を付けたものが2階微分であること。

停留点を求める際に注意が必要な場合

極値を求める問題は基本的に常に機械的に解けば求まるので簡単だと思いがちだが、だからこそたまに足をすくわれて間違えることがある。

例えば次の関数の極値を求める場合。

$$f(x,y) = x^3-xy^2-x^2+y^2$$

まず停留点を求めるので偏微分する。

\begin{align} f_x &= 3x^2 - y^2 -2x \\ f_y &= -2xy + 2y \end{align}

それぞれ0になる点を連立して解くわけだが、では$f_y=0$から始めて見る。

\begin{align} f_y = -2xy + 2y &= 0 \\ -2y(x - 1) &= 0 \tag{1} \end{align}

だから両辺$-2y$で割れば$x=1$が出て後は$f_x$に代入すれば終わり簡単だ。 …とやると間違える。

$(1)$をよく眺めてみると、$f_y=0$を満たすのは$x=1$のときだけではない。$x=1$の時であれば$y$の値は何であってもイコールゼロの関係は成り立つ。逆に$y=0$の時であればどんな$x$でもイコールゼロは成り立つ。

この条件を見つけ出してから$f_x$に当てはめてようやく全ての停留点が見つけられる。$x=1$だけでは全ての停留点が見つけられないので間違える。

で、$f_y$では$x=1$であれば$y$に制限はなく、$y=0$であれば$x$に制限はないのでそれぞれの条件を$f_x$に代入すると制限がかかり$f_x=0$と$f_y=0$両方を満たす$x,y$が求まる。

ラグランジュの未定乗数法

関数 $f(x,y)$の、領域D内での最大値または最小値を求めるにはラグランジュの未定乗数法が簡単。まず、領域D内での最大値または最小値は必ず領域の境界上でとる。境界を表す関数を$g(x,y) = 0$とする。このとき関数 $f(x,y)$は$g(x,y) = 0$のもとで点$(a,b)$にて極値をとる。こうおくと、 \begin{align*} f_x(a,b)&=\lambda g_x(a,b) \\ f_y(a,b)&=\lambda g_y(a,b) \\ g(a,b) &= 0 \tag{1} \end{align*} が成り立つ。この3の式を連立して$x$と$y$を求めるので、最初の2式は最初から$\lambda$を消去した形 $$ \frac{f_x(a,b)}{g_x(a,b)}=\frac{f_y(a,b)}{g_y(a,b)} \tag{2} $$ で始めれば計算が楽になる。なので$(2)$の形を採用すれば、$(2)$を計算して整理した式を$(1)$に代入すれば実際に$(a,b)$が求まる。後は求まった$(a,b)$を $f(x,y)$に代入して値を求めれば終わり。

2014年8月12日火曜日

3倍角の公式

3倍角の公式なんて普段あまり聞かないけど覚えておくといざというときに見を助けてくれる。 例えば球の慣性モーメントを極座標を使って求めようとすると$\sin^3 \theta$の積分が出てくる。これって普通にはできないので試験中の時間のないときに求めろって言われたらかなり焦る。

そこへ3倍角の公式を投入すると一瞬で解決してくれる。普通、3倍角の公式というぐらいだから$\sin 3\theta =$の形で置かれるがこれを変形して$\sin^3 \theta =$の形で覚えておけばすごく時間短縮できる。

$$ \sin ^3 \theta = \frac{3\sin\theta - \sin 3\theta}{4} $$

$$ \cos ^3 \theta = \frac{3\cos\theta + \cos 3\theta}{4} $$

…もし3倍角の公式を忘れてしまったのなら加法定理から少し手間だけど導ける。

$\sin(\theta + 2\theta)$として加法定理で展開し、その中に出てくる$2\theta$を再び$\theta+\theta$として加法定理で更に展開して求めるか、または$\theta + 2\theta$で展開してその後は2倍角の公式を使えば少し楽に求まる。

何にせよそんなに難しい公式ではないので覚えておけばかなり役立つと思う。

2014年8月11日月曜日

マクスウェルの方程式から波動方程式の導出

マクスウェルの方程式から波動方程式の導出をする。 まず条件として真電荷と伝導電流ともにない空間で、$\bm{E}$と$\bm H$は$z$と$t$のみの関数であるとする。

ガウスの法則$$ \rm{div} \ \bm D = 0 $$

は本来

$$ \frac{\partial D_x}{\partial x} + \frac{\partial D_y}{\partial y} + \frac{\partial D_z}{\partial z} = 0 $$

となるが、$z$と$t$のみの関数という条件のもと始めたので$z$微分の項以外は消える。よって$D=\epsilon E$より

$$ \epsilon \frac{\partial E_z}{\partial z} = 0 \tag{1} $$

となる。同様に磁界に関するガウスの法則

$$ \rm{div} \ \bm B = 0 $$

についても同様に

$$ \mu \frac{\partial H_z}{\partial z} = 0 \tag{2} $$

次にファラデーの法則

$$ \rm rot \ \bm E  = - \frac{\partial \bm B}{\partial t} $$

$$ \op{E_x}{E_y}{E_z}{x}{y}{z} = \left( -\rd{B_x}{t}, \ -\rd{B_y}{t}, \ -\rd{B_z}{t} \right) $$

だが例によって$x,y$による微分の項は消えるので

$$ \left( -\rd{E_y}{z}, \ \rd{E_x}{z}, \ 0 \right) = \left( -\rd{B_x}{t}, \ -\rd{B_y}{t}, \ -\rd{B_z}{t} \right) \tag{3} $$

よって

$$ \mu \rd{H_z}{t} = 0 \tag{4}$$

拡張されたアンペールの法則

$$ \rm rot \ \bm H = \bm j + \rd{ \bm D}{t} $$

$$ \op{H_x}{H_y}{H_z}{x}{y}{z} = \left(j_x,\  j_y,\  j_z \right) + \left( \rd{D_x}{t}, \ \rd{D_y}{t}, \ \rd{D_z}{t} \right) $$

だが、先程と同様に$z$微分以外を消し、また伝導電流$\ \bm j$がないという条件なので消え

$$ \left( -\rd{H_y}{z}, \ \rd{H_x}{z}, \ 0 \right) = \left( \rd{D_x}{t}, \ \rd{D_y}{t}, \ \rd{D_z}{t} \right)  \tag{5}$$

となり

$$ \epsilon \rd{E_z}{t} = 0 \tag{6}$$

続いて$(3)$より

\begin{align} \rd{E_x}{z} &= -\mu \rd{H_y}{t} \tag{7} \\ \rd{E_y}{z} &= \mu \rd{H_x}{t} \tag{8} \end{align}

続いて$(5)$より

\begin{align} \rd{H_x}{z} &= \epsilon \rd{E_y}{t} \tag{9} \\ \rd{H_y}{z} &= -\epsilon \rd{E_x}{t}  \tag{10}\end{align}

まとめると$(1)$と$(2)$より$E_z$と$H_z$は定数であることがわかる。そして電磁波の場合ともに0とおくことができる(らしい。よくわからない。) 

後はうまいこと式を変形させて波動方程式の形に持っていけば良い。例えば$(7)$を両辺$z$で微分して$(10)$も両辺$t$で微分する。積分順序は積分結果に関係ないので順番が違っても同じものとみなせば

$$ \frac{\partial^2E_x}{\partial z^2} = \epsilon \mu \frac{\partial^2 E_x}{\partial t^2} $$

同様にうまいことやれば

$$ \frac{\partial^2E_y}{\partial z^2} = \epsilon \mu \frac{\partial^2 E_y}{\partial t^2} $$

$$ \frac{\partial^2H_x}{\partial z^2} = \epsilon \mu \frac{\partial^2 H_x}{\partial t^2} $$

$$ \frac{\partial^2H_y}{\partial z^2} = \epsilon \mu \frac{\partial^2 H_y}{\partial t^2} $$

2014年8月10日日曜日

マクスウェルの速度分布則の計算

マクスウェルの速度分布則の計算がややこしかったので計算部分だけまとめ。

\begin{align*} \overline{v} &= \int_0^{\infty} v 4 \pi v^2 f(v)dv \\ &= 4 \pi \left( m \over{2 \pi k T} \right)^{3 \over{2}} \int_0^{\infty} v^3 e^{-{mv^2 \over{2kT}}} dv \end{align*} ここで \[ t = {mv^2\over{kT}} \] とおく。 \begin{align*} {dt \over {dv}} &= {2mv \over {kT}} \\ dv &= {kT \over {2mv}} dt \end{align*} \(t\)と\(dv\)を元の式に代入する。積分の部分だけ抜き出して計算すると \begin{align*} &\int_0^{\infty} v^3 e^{-{mv^2 \over{2kT}}} dv \\ =& \int_0^{\infty} v^3 e^{- \frac{t}{2}} \frac{kT}{2mv} dt \\ =& \int_0^{\infty} v^2 e^{- \frac{t}{2}} \frac{kT}{2m} dt \\ \end{align*} \(t=\)を変形して \[ v^2 = \frac{kT}{m}t \] なのでこれを代入して \begin{align*} =& \frac{k^2 T^2}{2m^2} \int_0^{\infty} t e^{-\frac{t}{2}} dt \\ \end{align*} ここでまた積分の部分だけ抜き出して計算する。部分積分を使って計算する。 \begin{align*} & \int_0^{\infty} t e^{-\frac{t}{2}} dt \\ =& \left[ -2 t e^{-\frac{t}{2}} \right]_0^\infty - \int_0^\infty - 2 e^{-\frac{t}{2}} dt \\ =& \left[ -4 e^{-\frac{t}{2}} \right]_0^\infty \\ =& 4 \end{align*} よって最初に始めた積分は \[ \frac{2 k^2 T^2}{m^2} \] よって \begin{align*} \overline{v} &= 4 \pi \left( m \over{2 \pi k T} \right)^{3 \over{2}} \frac{2 k^2 T^2}{m^2} \\ &= 2 \sqrt{ \frac{2kT}{\pi m} } \end{align*}

電場と電束密度と磁場と磁束密度

ややこしいので簡潔にまとめておく。

電場 E [\({\rm V/m}\)] [\({\rm N/C}\)]

電束密度 D [\({\rm C/m^2}\)]

磁束 H [\({\rm A/m}\)] [\({\rm N/Wb}\)]

磁束密度 B [\({\rm Wb/m^2}\)] [\({\rm T}\)]

\[D = \epsilon E\]

\[B = \mu H\]

1Cの電荷から出る電束が1本。電束は電荷だけによって決定される。

単位面積当たりの電束が電束密度。

単位面積当たりの電気力線の本数が電場。

電束は誘電率に左右されず、どこでも同じ本数。

積分まとめ

こんなの知らなきゃ絶対解けないと思う積分が出てきたので整理しておく。

\begin{align*} &\int_0^{2a} \sqrt{2a-x \over x} dx \\ \end{align*}

\(x = 2 a sin^2 \theta\)とおく。

\begin{align*} x &= 2 a \sin^2 \theta \\ &= 2a \left( 1 - \cos 2\theta \over 2 \right) \\ {dx \over d\theta} &= 2a \sin 2\theta \end{align*}

\( 加法定理より \)

\begin{align*} \sin(\theta + \theta) &= \sin\theta \cos\theta + \cos\theta \sin\theta \\ &= 2\sin\theta \cos\theta \end{align*}

なので

\begin{align*} {dx \over d\theta} &= 2a \sin 2\theta \\ &= 2a(2\sin\theta \cos\theta) \\ &= 4a \sin\theta \cos\theta \\ dx &= 4a \sin\theta \cos\theta d\theta \end{align*}

となる。積分範囲は\(0 = 2 a \sin^2 \theta\)より\(\theta = 0\)から\(2a = 2 a \sin^2 \theta\)より\(\theta = {\pi \over 2}\)まで

これらを使って

\begin{align*} &\int_0^{2a} \sqrt{2a-x \over x} dx \\ = &\int_0^{\pi \over 2} \sqrt{2a-2 a \sin^2 \theta \over 2 a \sin^2 \theta} 4a \sin\theta \cos\theta d\theta \\ = &\int_0^{\pi \over 2} \sqrt{1 - \sin^2 \theta \over \sin^2 \theta} 4a \sin\theta \cos\theta d\theta \\ = &\int_0^{\pi \over 2} \sqrt{\cos^2 \theta \over \sin^2 \theta} 4a \sin\theta \cos\theta d\theta \\ = & 4a \int_0^{\pi \over 2} {\cos \theta \over \sin \theta} \sin\theta \cos\theta d\theta \\ = & 4a \int_0^{\pi \over 2} \cos^2 \theta d\theta \end{align*}

あとは普通に計算できる。

2014年8月6日水曜日

ロケットの打ち上げ

ロケットの打ち上げの問題で悩んだので整理してまとめておく。 ちなみにこの問題の結論となる式はツィオルコフスキーの公式と呼ばれている(ロシアのツィオルコフスキーが考えたので)。

まず、僕が思うスタンダードな解き方。 ロケットの時刻tにおける速度をv、tにおけるロケットの質量をm、ガスの時間あたりの噴射量をn、ガスの噴射速度をwとする。

運動量保存則に従って式を立てる。左辺が時刻tでの運動量で右辺がt+Δtでの運動量である。

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 右辺第1項がロケットの運動量、第2項が噴射されたガスの運動量。ロケットはガスの分だけ軽くなりその分加速している。ガスは相対速度v-uで放出されている。

つぎにこの式の括弧を展開する。このとき微小量の2次の項は無視しても構わないことに注意。展開して微小量の2次の項を消すと次のようになる。

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 ここでロケットの時刻tにおける質量は次のようになるのでこれを代入する。

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 代入したものを計算していく。

 Latex image 17

初期条件t=0でv=0よりcを求め、まとめると

 Latex image 18

という結論が導かれる。 これは素直に運動量保存則の式を立てれば後は流れ作業で求まる。

では僕が悩んだのが次の解き方。といっても別に解き方が違うわけではなくガスの噴射量の変数の置き方が異なる場合の話。ガスの噴射量をさっきはn[kg/s]と置いたがそうではなく-Δmと置く場合である。とりあえずこの場合の運動量保存則の式を立てる。

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見るからに違和感バリバリ。お陰で凄く悩まされた。 時刻が進むとロケットの質量が増加?ガスの分の運動量が引かれてるっておかしくないか?

ここで先ほどの

Latex image 16 

 をもう一度見てみる。これをtで微分すると

 Latex image 20

これはつまり 

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こういうことなので、これを一番最初に立てた運動量保存則の式に当てはめると違和感バリバリの運動量保存則の式とおなじになる。 というわけで一見おかしいように見えて式自体は正しかったわけだ。

ではなぜあれで正しいのか。それはさっき求めたとおりΔmが負であるからだ。ようはこのΔmというのは単にガスの噴射量というわけではなくロケットの質量の変化量だということを思い出せばわかる。

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単にΔmと書けば実際それが表すのは負の数である。だから実際の増えたり減ったりする質量としてみると正の数でなければいけないのでマイナスを付けている。 

よってΔmを使った式を立てる場合は 以下のように考えて式を立てればよい。

 Latex image 23

 一応この先の解き方を示しておく。例によってまず展開して微小量の2次の項を消去。

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後は積分。

Latex image 25初期条件を求めてまとめると

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2014年8月5日火曜日

単振り子の回転

図のように、長さlの糸の先に質量mの物体を取り付け初速度V0で打ち出す。このとき、

(1)糸がたるまずに振動するためのV0

(2)糸がたるまずに回転するためのV0

を求めよ。

Untitled 1

(1)

まず張力Tを求める。

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張力Tは物体の遠心力と重力の法線成分の和とつりあっている。

また、力学的エネルギー保存則により次の式が立つ。

Latex image 7 

左辺がt=0での力学的エネルギー、右辺が角度θのときの力学的エネルギーである。物体が折り返すときはv=0のときであるから、次のように変形してv=0のときの角度を求める。

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 これを最初に立てた張力の式に代入する。物体が折り返すとき、例によってv=0なので遠心力は0となり、また張力が0以上であればたるまない。よって

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 以上のように求まる。結局これは折り返すときに遠心力が働かないので、張力を作り出しているのは重力だけだということがポイントである。なので回転角は90°までになる。

(2)

今度は物体が頂上まで来た時に張力が0以上であればよい。頂上ということはθ=πなのでこれを(1)で求めた式に代入してv0を求める。

張力の式にθ=πを代入すると

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同様に力学的エネルギー保存則の式にも代入すると

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これを張力の式に当てはめれば求まる。

 Latex image 13

 ようは頂点での速度を初速度を用いて表し、これを張力の式に当てはめればその時の張力がわかる。あとはこの張力がたるまないという条件に沿うよう初速度を設定すればよい。

 

2014年8月2日土曜日

空気中に置かれた棒の熱伝導

「空気中に置かれた十分に長い半径rの円柱がある。一端をT1に保ち他端は空気の温度T0になっているとするとき、定常状態での棒の温度分布を求めよ。円柱物質の熱伝導率をλ、表面熱伝導率をαとする。」

このとき重要なのは次の図である。 a

円柱の軸にそってx軸をとる。x方向の微小体積を考えた時、定常状態であるから流入する熱量と流出する熱量が等しい。このことに気付けるか気付けないかが問題が解ける解けないを決定する。

x軸方向へは熱伝導率λで熱が伝わっていく。そして左から流れ込む熱量と右から流れ出す熱量の差は表面から熱伝導率αで空気中へ逃げていく。

あとはこの関係を式に起こし微分方程式として解けばよい。

2014年8月1日金曜日

密度を使用した体膨張率の導出

少し苦労したのでまとめておく。
まず 密度の定義から体積は
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と表される。ここで体積を密度で微分すると
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これを体膨張率の定義式(θは温度 )
 
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に代入すると
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ここで密度の定義式からM/Vが密度ρなので
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 と導かれる